なぜ僕は傘屋になったのか?(2)
そんなある日。
4月の末のことです。気分はもうすっかりゴールデンウィ―クで、僕は仲の良い友人たち数人と、お酒を飲みながらドンチャン騒ぎをしていました。
そんな中、ライターである友人のひとりとある話題で盛り上がっているうちに、僕の背中に「ビビッ」と電流が走ったのです。
大袈裟な言い方じゃなく、まさにゾクゾクした瞬間でした。
ビールジョッキ片手に雑談を交わし、ある話題に話が及んだ、まさにその瞬間!
僕の頭の中で、ビジネスアイデアが「パッ」と閃きました。それは、あたかも天啓のように。
僕は居てもたってもいられず、会話の途中で椅子を蹴飛ばし、一目散で店を後に・・・というのはウソですが、とにかくしばらくは興奮で気もそぞろ。
それからしばらくして友人たちと別れ、僕はすぐに事務所に戻りました。深夜2時でしたが、そのとき生まれたアイデアを1冊のノートに無我夢中で書きなぐっていきました。
では、その話題とは? そのアイデアとはいったい何だったのか?
ズバリ、傘です。
そう。その日、何気ない会話の中で登場した傘。それがきっかけとなって、僕は傘に関するあるひとつのアイデアを思いついたのです。
雨の日が嫌いな人は多いでしょう。
僕もそうです。雨ほど厄介で鬱陶しいものはない。大嫌いです。
ところが、嫌いといっても、雨ばかりはどうすることもできません。
テルテル坊主を軒先にぶら下げても、「明日天気になぁ~れ!」と靴を投げてみても、やっぱり降るものは降る。なぜって、日本は雨大国。比較的晴れの日が多い東京でも、年間降雨日数はおよそ90日で、実に4日に1日は雨が降る計算になります。
となると、これは一大事です。
なにしろ、東京では、雨が嫌いな人は、少なくとも1年の4分の1をブルーな気分のまま過ごさなきゃいけない。考えてみると、ゾッとします。
嫌いなものを嫌いなままでいい。それもひとつの考え方かもしれません。
でも、もしも嫌いなものを好きになることができたなら、どうなるでしょう? ― 人生はもっと楽しくなるのではないでしょうか。
もしも大嫌いな雨を好きになることができたなら?
ひょっとすると、雨の日が待ち遠しくなるかもしれません。そして、雨の日が待ち遠しくなることで、晴れの日がよりいっそう好きになるかもしれません。そうなれば、どれだけ素敵なことでしょう。なんだか、この先の人生を得した気分にもなれそうです。
では、どうなれば嫌いな雨を好きなれるのか?
残念ながら、その答えを僕は知りません。でも、ひょっとしたら、「これなら雨の日が待ち遠しくなるかもしれない!」というアイデアなら思いつきました。そのアイデアとは傘にある工夫をこらすこと。
でも、ちょっと待った!
「もしかしたら、僕のその傘のアイデアはもう他の誰かがカタチにしているかもしれない・・・」
そうも思ったので、インターネットや百貨店、セレクトショップなど、いろいろ調べてみました。でも、なかったのです。僕の考えるような傘は。
さて、僕の考えた傘とはどんなものなのか?
それは、ひと言でいうと、「自分でカスタマイズできる傘」ということになります。
例えば、とっておきのお気に入りの洋服を選ぶときの、あのワクワク感。楽しいですよね。
オシャレしたその服を着て、どこでもいいから出かけたくなりますよね。僕は、これと同じ感覚を、傘でも味わえないかなと思ったんです。
それができれば、ひょっとすると、雨の日のブルーな気分も少しは晴れやかになるんじゃないかと考えてみたんです。
でも、残念ながら、そんな傘はどこにも見当たりません。
そこで、だったらしようがない。「自分で作っちゃおう!」なんて勢いにまかせて、僕は傘を作ってみることにしたのです。
僕が届けたいのは傘じゃありません。雨の日の“楽しみ”を届けたいんです。
だから僕の傘は、あれば助かる傘ではなく、雨の日が待ち遠しくなる傘だと思っています。
お気に入りの洋服を選ぶように、その日の気分や洋服とのコーディネイトに合わせられる傘。「今日はどの傘にしようかしら♪」なんて選ぶ楽しさを感じてもらえる傘。
自分でカスタマイズできる傘 ― 僕が欲しかったのは、雨の日を楽しめる、まさにこんな傘でした。まだまだ開発段階ではありますが、そんな傘を作っています。
(続く)
By 井上たかお, 2009 年 6 月 20 日 @ 1:34 PM
田中さん
前回の飲みで田中さんから言われた言葉が
未だに頭の中をかけめぐってます。
『小さく動いてる間は大きく得ることは出来ない』
(英語でしたが)
この言葉を胸に私は前に進んでいきますので
これからも宜しくです☆
P.S. 本、ありがとうございました。
もう読んでレビュー書いてしまいました。
By tanaka, 2009 年 6 月 22 日 @ 10:19 AM
アンチさん
コメントどうも!
いや~、何か偉そうなこと言っちゃいましたね(苦)
すんません。
でも、自戒の念も含め僕は本当にそう思ってます。
たなか