クレーム電話の極意
クイズです。
私がいないと私を求め、私がいると私の前から逃げるものは何か?
答えは・・・雨です。
カラ梅雨ってのも水不足なんかの問題を引き起こして困りもの。
でも、その逆も困る。というかイヤ。どうやらまだ夏には遠いみたいだ。今月はずっーーーと、パッとしない天気で、「カラッ」とした青空は8月に持ち越しの模様。
じっさい。今日も雨降ってるし。
ところで。
先日、出張先でたまたま手に取った1冊がある。
長い移動時間の暇つぶしにと思って、さほど期待していなかったのだが、いざ読み始めると、ところがどっこい。これがなかなか面白かったのである。しかも、ひじょーに参考になった。
この1冊である。
以下、本の裏表紙からの引用である。
大手広告代理店を辞め、「珠川食品」に再就職した佐倉涼平。入社早々、販売会議でトラブルを起こし、リストラ要員収容所と恐れられる「お客様相談室」へ異動となった。クレーム処理に奔走する涼平。実は、プライベートでも半年前に女に逃げられていた。ハードな日々を生きる彼の奮闘を、神様は見てくれているやいなや・・・・・・。サラリーマンに元気をくれる傑作長編小説。
この本を面白いと感じるかどうか。それは個人差があるだろうから、正直、僕にはわからない。だから興味がある人だけ読んでみてほしい。けれど、ストーリーの面白さとは別に、この本で書かれていた「クレーム電話の極意」は、誰にとっても大変参考になるに違いない。
僕の会社は、テレマーケティングとダイレクトメールで保険を販売することを生業としている。
そんなわけで、ここだけの話。けっこうな数のクレーム電話がかかってくる。
そりゃあ、そうだ。なにしろ1ヶ月に何千通、多い時は何万通ものダイレクトメールを送っているのだから、中には「ひと言もの申したい!」というお客様だっているだろう。
ちょっとしたことで「社長を出せ!」なんていうお決まりのケースからはじまって、ひどいケースだと僕の会社の社名(おまかせホットライン)がふざけてるとか、ダイレクメールの糊づけが甘いとか、「それはちょっと言いがかりってもんでしょ」なんて電話もある。
そんな僕からしてみても、この本で書かれている「クレーム電話の極意」には納得だった。
「お説ごもっとも!」と降参したぐらいである。
その極意は、「なぜお前が、相手を怒らせたのかわかるかい?」と主人公・涼平がクレーム処理の達人・篠崎からアドバイスを受けるシーンから始まる。曰く。
ひとぉつ ― 謝罪の言葉がない。まず、謝る。向こうはそれを期待して電話をかけてくるんだから。
ふたぁつ ― 相手の口を塞いだこと。どんな話だろうが最初は辛抱強く聞く。しばらく聞いていれば、向こうの事情や人となりもわかってきて、どう対応すればいいかがわかってくるし、向こうさんだって喋っているうちに頭へ昇ってた血が下がってくる。気持ちよく喋らすために、あいづちはこまめに。何パターンか使いわけて。
みっつ ― お前が熱くなってどうする。声を聞いただけで兄ちゃんが苛ついてるのがわかったよ。確かに電話でむちゃくちゃなことを言う客もいるし、いきなり怒鳴りつけてくるやつもいるけど、こっちはあくまでも冷静でなくちゃ。適当に聞き流して、頭の中で歌でも歌ってればいい。北島三郎とかいいよ。何を聞いてもヘイヘイホー。童謡なんかもいいな。軍艦マーチはだめ。攻撃的になっちゃうから。
向こうにじゅんぶん喋らせたら、こっちが喋る番だ。まず相手の電話に感謝すること。貴重な意見をありがとうございます。ヘイヘイホーってね。洞察力を褒めたりしてもいい。自分は義憤にかられて電話しているんだって思っている人間も多いから。世間を代表してひとこと言ってやらねばって。個人的な話を始めたら、それも聞いてやる。ラーメンごときで激怒する人間なんてそうはいない。怒りの裏側には、たいてい何か理由があるもんなんだ。ラーメンにだけ怒っているんじゃない。そのへんも聞いてあげなくちゃだめだ。人生相談のつもりで。それとな、責任者に替われって言われても、簡単に替わるな。
自分が責任者であるという態度で接する。でも、責任をとるって言ったらいかん。責任をもって伝えます―こう言う。責任持てるのは、あくまでも伝えることだけ。ここ、ポイントな、メモしとき。まぁ、ほかにもいろいろあるけど、それはおいおい。とにかく基本はあくまでも低姿勢だよ。頭はいくら下げても減らんでしょ。
と、まぁ、ここら辺は基本かもしれません。
でも、案外次のことを軽くみていて、大怪我にいたるケースが多い。これ、実感です。
「でも、電話口でお辞儀まで?向こうに見えもしないのに?」(涼)
「見えるんだな、それが。ちょっと目を閉じてみ」(篠崎)
「申しわけございません」
「申しわけございません」
篠崎が二度同じセリフを繰り返してから尋ねてきた。
「どう、聞き比べて?」
目を閉じたまま答える。
「なんだか、最初のほうがよかったな。微妙なんだけど。ふんわり柔らかな感じで、本当に謝られてる気がしましたよ。二回目のはなんだか馬鹿にされてるみたいな気も・・・・・・」
「そうだろ、違うんだ。一度目はちゃんとお辞儀をしながら言ったんだ。電話をしている気配までわかっちまうもんなんだ。衣擦れの音とか、震動とか、息づかいの違い、そういうのがな」
「じゃあ、二度目は?」
「目、開けてみ」
目を開けると、目の前の椅子にふんぞりかえり競馬新聞を広げた篠崎がいた。開いた紙面に赤鉛筆で大きく『バカタレ』と書いてある。新聞紙の向こうで篠崎があかんべをしていた。
「な」
電話は相手の顔が見えない。
それゆえ、電話するときは通常よりも聴覚が研ぎ澄まされるのだ。全神経を集中する。
だからこそ、わかってしまうのである。相手の微妙なニュアンスや態度が。
電話対応ではこうした「目に見えない空気」を軽視しがちである。
だから、手痛いしっぺ返しを頂戴してしまう。
「以心伝心」という言葉があるが、こと電話に限っていえば、これは本当である。
自分がないがしろにされてると思えば、相手は「オレの話を聞いてんのかッ!責任者出せ!」と烈火のごとく怒るだろう。
反対に、こちらが誠心誠意相手の言い分に耳を傾ければ、「ま、アンタに言ってもしようがいないけどさ。ゴメンナサイね」と硬化した態度を和らげてくれる。
そして、その結果として、コチラが笑えば、相手も笑ってくれるのだ。
これで一件落着。
ラ・ポールっていうのかな。コチラと相手の気持ちが通じ合えた瞬間である。
今の時代、PCと同じく電話もビジネスにとっては切っても切れない必須アイテムになっている。
そんなわけで、自分のための備忘録として今日は「クレーム電話の極意」について長々と書いてみました。
少しはあなたのお役に立てたでしょうか?
追伸:
この記事を読んでいる社員のみんな!
つまりは、そういうことです。電話応対はストレスの多い業務ですけど、よろしく頼みます。